かじかのつぶやき

絵を描き 写真を撮り 本を読み 猫と遊ぶ ときどきお仕事な日々。。。

あなたに似た人

もう、散々あちこちに書き散らしたので「またか」と言われそうなんだけど、

私はイルカさんに似ていると、たまに言われる事がある。
高校時代、美術部の顧問の先生から「かじかさんは美術部のイルカだからw」と笑いながら言われたのが最初で、それまで似ているだなんて自分自身、全く考えた事もなくて、大いに困惑したのを覚えている。


そして今現在も「似てるのかなあ・・・」と頭をひねる事は多々あるんだけれど、ギター弾けませんだの、カラオケでなごり雪は唄いませんだの、オーバーオールは履きませんだの、話のつなぎのネタに使っていたりするのだよ。

で、
そんな私なんだが、ある人に「そっくり」らしい。
ある人、ってのは、私も全く知らない人なのだ。
一度も会ったことがないし、この先も、会う事は100%無いだろう。
遠い昔の事なのだ。




いつの事だったか、記憶ももはやおぼろげで、
確か、1985年頃の秋だったと思う。

私は池袋PARCOの7階辺りにあった書店で平積み本を物色していた。
現在のPARCOはレストラン街になっているが、昔はサブカル本や洋書も豊富な本屋さんがあって、私は池袋に来ると必ず立ち寄るのが楽しみだった。



「ハヤカワさん!」
※実際にはなんて呼びかけられたのか忘れちゃったので、とりあえず仮名のハヤカワさんにしておきます。


すぐ近くで、私の顔を見ながら、満面の笑みで初老の男性が立っていた。
ちょいとラフな感じのブレザーとスラックス、薄めの白髪に丸顔で眼鏡の奥の小さな目は驚きと嬉しさが宿っていた。

(・・・?)
私は至近距離にいる別の誰かに呼びかけてるのだと思って、左右を見回したがそこには誰もいなくて私だけだった。

「夏の△%$#¥ゼミはお疲れさまでした!!暑かったねえ!」

(・・・・・・・???)
ポカーンと言う表現がピッタリなリアクションの私。

そのおじさんは怪訝な顔になり、なんとか大学のなんとかゼミのハヤカワさんですよね、と言うので、私はハッキリと、
「違います」
と申し上げた。すると彼は、

「え!!・・・あ、申し訳ない!あんまりそっくりだったので間違えました!本当にすみません!」
どこかの大学の先生と思われるその男性は、丁寧に頭を下げた。
私は「いえいえ~」とよそゆきスマイルでかわし、平積み本のエリアを離れた。
彼はそこに立ち尽くし、思いっきり困惑した顔で私を見送っていたんだが、なんと!週刊誌エリアに移動した私の後を追ってきた!

今だったら、そういうオジサンは【通報レベル】なのでしょうが、時代は昭和末期。そこまで私も考えなかったし、実際この先生は、当時の私にはアヤシい人には思えなかった。

先生「ごめんなさい!本当に?ホントにハヤカワさんじゃない?」

ビックリしたついでに笑ってしまい、
私は少し強めに「いいえ、違います!人違いです!」と言った。

先生は再び申し訳なさそうに、二度三度と頭を下げて詫びると、その場から立ち去っていった。
何度も首をかしげながら。。。

話はそこで終わりなんだが、
私はどうにも「ハヤカワさん」が気になってしまった。
大体、イルカに似てるって自分自身さほど思っていない身としては、イルカ以外の誰かに瓜二つと言われたら、どんだけ似てるのか確かめたいと思ってしまう訳さ。

だが、どこの誰だか全く解らない。
私を教え子と見間違えたこの先生も、おそらく存命ではないと思われ。

永遠に会う事はない、ハヤカワさん。
私と同世代でしょうから、色んな思い出を沢山作って、山あり谷あり人生イロイロな日々を送られているかもしれない。

暑かったあの日のゼミは、どんな内容だったのかな。
先生は普段どんな授業をなさるのかしらね。
あなたの大学生活はどんなだったのかしら。

40年近く経った今でも、知りたいなって、時々思う。