かじかのつぶやき

絵を描き 写真を撮り 本を読み 猫と遊ぶ ときどきお仕事な日々。。。

食べられなかった頃。

暮れの大掃除で2つある本棚を整理しました。
読み返す事が多分無いと思われる本が40冊ほど。
なかには全く読んでない本もありました。
これらは年明けにブックオフに「ドナドナ」しました。
千円札数枚に姿を変えて、戻ってきました。

私の悪いクセです。
読みたい読みたいと思ってネット書店でつい、クリックしてしまったものの、届いてみると全然読む気にならず、1ページも開く事がないままブックオフ行きになってしまった本が何冊もあります。

著者と出版社に申し訳無い。
何でクリックしちゃったのかな。
本てのは、ネットで買うのはやめて書店でまず手に取ってから買うべきだよな。

そう思っても、欲しい本てのはネット上にはあっても書店にない場合も多いです。
ブックレビューに載せられた讃辞を鵜呑みにしてクリックしたものの、あとでそれがステマ疑惑のあるレビューだと解って失敗した事数知れず。
うーん・・・(丿A`*)

今回、それら哀れな本達の他に、どうすんのこれ?的な本も大量に「出土」しました。

料理のレシピ本です。
優に100冊近くあります。
半分は、女性向け通販雑誌の毎月お届けサービスで購入したもので、残りは書店で衝動買いしたものです。

こう書くと、
私という人間は、お料理が大好きで、さぞかし毎日美味しいおかずを作り、時にはオシャレなスイーツもこしらえる事だろうと思われるでしょうね。

実際の私は、その正反対な人間です。
どちらかと言えば、それほどお料理には熱を入れないし、まぁ適度に美味しく食べられればいいかな、くらいです。
レシピの数に反して、レパートリーだって大した事ない。
誰もが普通にチャチャッと作れるようなおかずしか作っていないと思います。
器にも材料にもこだわりなどありません。
要はお腹が満たされればいい。その程度のレベルです。

だのになぜ、100冊ものレシピ本を持っているのでしょう。

これらは、言ってみれば、私の「格闘の記録」でもあります。

何と闘ったのかと言えば、持病の潰瘍性大腸炎(UC)です。
最近は安倍晋三総理の持病で、多少メジャーになった様な気がします(笑)

簡単に言えば、自己免疫システムに異常が起こって、腸が腸を攻撃して潰瘍をつくり、激しい腹痛と下痢・下血、時には嘔吐や関節炎などの合併症も併発する、国指定の難病です。

発症原因が特定出来ないために、対症療法でしか苦しい症状を抑えられず、完治は不可能とさえ言われています。
最近は発症原因が少しずつ解明されて、治療法や投薬にも新しい方法・成分が登場してきましたが、難病である事にかわりはありません。

治療が功を奏し、症状が軽減あるいは消滅しても、治った訳ではなく、緩解と言います。
その状況が長く続く人もいれば、何かの拍子に突然症状がぶり返す事もあります。
それを再燃と言います。
多くの患者さんは、この緩解期と再燃期をくり返します。

私も、数年の周期でこれをくり返しています。
再燃すると、入院して絶食(点滴)あるいは通院及び厳しい食事制限が課せられます。
私の場合、入院はせずに食事を徹底的に制限しました。

最近の再燃は2010年の夏から冬にかけてでした。
その間、口に出来たのは、
ポン酢をかけたお豆腐。
具が何もない素うどん。
レンジで蒸かしたジャガイモ。
温泉玉子。
うんと軟らかく炊いたおかゆ。

それだけでした。
(もっと重症の人は、これらも口に出来ない場合もあるので、私はまだ良かったのかもしれません)

幸い、胃はなんともなかったので、常に空腹状態でした。
食欲はあるんです。

食べたい。食べたい。頭の中は食べるものでいっぱい。
食べたい。食べたい。
でも、食べるとその先に待っている激痛の方がもっと怖いし辛い。

毎日が我慢の連続でした。

フラフラする足取りで所沢の専門医に通い、診察が終わると電車に乗って所沢で降り、西武百貨店内をウロウロして気分転換をして、家に戻る日々。

レストラン街をつい歩いてしまう私。
でも、食べられそうなメニューが一つもない。
ああ。お腹空いた。でもダメ。食べちゃダメ。
お店の前に呆然と突っ立っていて、スタッフに「お食事・・・ですか?」と声をかけられ、ハッと我にかえって「あ、い、いえ」と言ってあわてて逃げてくる事も数回。

相当、病んでました。
そんな時、レストラン街の隣にある書店に行き、本を眺めるのでした。
立ち読みする場所は、決まって「料理」の書架。
そこで、有名料理家のレシピ本から人気ブロガーのレシピ集などを片っ端から眺めては、数冊持ってレジに行く。

通院の時はこれを何度もくり返すのです。
レシピ本に載せられた写真を眺め「緩解したらコレ作ろう・・・」そう思っては書架に戻さずにレジに持って行く。

帰りの電車内で、買った本を取り出してボーッと写真を眺めてる。

お腹痛いの治ったら、これ、作る・・・

そうやって溜まったレシピ本が50冊くらいあるのですよ・・・(;-ω-)a゙

我ながら、どうかしていますね(笑)
自分でも、そうやって料理の本を買い集める事が普通じゃないって頭の片隅で思ってるんです。

レジに持って行く時にも、頭の片隅で「そんなの買ってどうすんのアタシ」って警告メッセージが発せられています。

それでも買ってしまう。。。

食のストレスってのは、予想外に深刻です。
精神的なダメージも大きい。
UC患者の誰もがそうだとは思いません。
私の場合、とても大きかった。(食い意地がはってたからでしょうねwww)

やがて、
再燃期も終わります。
症状が落ち着いてきて、血液検査の数値も安定し、念願の緩解期に突入します。

そうなると食事制限も解除になります。
とは言っても刺激物は制限ないしごく少量に抑えます。

すると、あれだけ「元気になったらコレ作ろう」と思って集めたレシピ本には見向きもしなくなるのです。 

本棚には、行き場の無い大量の料理本が残される。

あんなに「絶対作ろう!」と思っていたのに。
情熱も興味も陽炎の様に、脳裏から消えてしまうのです。

脳って不思議です。
目を向ける方向をちょっとずらしただけで、今までとは全く違う世界が思考を支配する。

ちょうど、高層建築の最上階にある展望台でよく見かける、コインを入れると使える望遠鏡の様に、ちょっと角度を変えるだけで、スコープの先の景色が一変するみたいに。

そして私は、目の前に積み上げられた料理の本を前に、
「なんでこんなに買ったんだよ・・・」と自分に呆れるのでした(笑)

結局、
私はレシピ本をすべて本棚に戻しました。
おそらく、この先一度も作らないであろうと思われるけど。
捨てられませんでした。

緩解して2年以上過ぎました。
今のところ、非常に快調です。
食事制限はほぼ解除です。
「命取りになるよ」と主治医に言われ、6年3ヶ月も食べる事が無かった本格インドカレーも、先週カレーの専門店でオーダーし、恐る恐る食べてみましたが、その後体調悪化はなくてぴんぴんしてます。

やったね!カレーはクリアだ!ヽ(≧∀≦)ノ★
あとはキムチですが、元々キムチはそれほど好きでもないので、チャレンジは先送りですw

料理も作ってみればいいのですけどね。せっかくレシピが大量にあるんだから。
でも、
どうやっても、あの時の「元気になったら絶対作る!!」という情熱が戻って来ないんですよねえ(笑)

それはある意味、幸せな事なのかもしれませんね。
そう思う事にしている、今日この頃です。