流れ星に出会うまで
お久しぶりでございます。
今日は、はてなブログの【お題】を選んで記事を書いてみましょう。
私にとって、もう一度行きたい場所。
それは万座温泉の宿です。
遡る事、40年前の夏。
両親と私達3人姉妹、5人で出かけた最初で最後の家族旅行。
当時は高速道路も便利に伸びている訳ではなく、一般道を地図を見ながら走ったので、埼玉のお隣の群馬県も、とても遠い場所でした。
夕方、軽い夕飯を済ませてから出発です。
当時の父の車は、マツダのグランドファミリア。
車酔いしやすい末妹が助手席で、左端に母、真ん中に上妹、右端の運転席の後ろに私が乗りました←大分狭かったよ( ̄▽ ̄;)
どこをどう通って群馬へと入ったのか、
当時高校1年の私は旅や道路に全く興味が無かったので解りませんが、山を越え峠を越えて行ったような記憶があります。
街灯の少ない道で、ガードレールの向こう側は暗闇に沈む渓谷があり、工事中の保安照明が点滅していた事は覚えています。
うら寂しい道を抜けると、暗い灯りが灯るドライブインがありました。
※今、ドライブインて日本中にどのくらい残っているんでしょうね?高速道が発達した今は、サービスエリアやパーキングエリアも充実していて、一般道のドライブインも【道の駅】に取って代わられ、商売にならないんじゃないかなあ・・・※
他にお客もいない店内で、ラーメンを夜食代わりに食べた気がします。
休憩を終えてしばらく進むと、道の両側を歩く人が急に増えました。
街灯も明るくなり、開いている店もある様子。
父に聞くと「軽井沢だよ」との事でした。
うんと後になって、そこが旧軽井沢銀座だと知りました。
やがて人通りは再び途切れ、街灯の灯りも乏しい坂道を上って行くと、とても広い場所に出ました。
そこで車中泊です。
狭い車内。
身体を折り曲げて目を閉じました。
エンジンを切ると一気に温度が上がります。
窓を開けると蚊の大群。
寝られたもんじゃありません(;´Д`)
座席で身体を反らせ、頭上のリアガラスから外を眺めました。
あ。
(*゜д゜*)
木立の間からのぞく星空。
次々と流れる流星。
まるで雨粒のように、夜空に線を描いて消えて行きます。
なんとか流星群接近、と言う話題になると人はみな夜空を見上げますが、
あの時みた流れ星は、その後の色んな流星群よりも遙かに多く、美しかったです。
・・・それにしても、
私達家族は一体、どこで車中泊をしたんだろう。
鬱蒼とした木々の合間に大きな広場。あれはどこだったのか。
目をこらして外を見ると、
私達と同じように様々な車が停まっているのが解りました。
暑苦しさと流星の美しさと家族の寝息の中で、
私もやがて眠ってしまいました。
朝。
浅い眠りゆえ、なかなか目が開かないうちに、父は車を発進させました。
(そのせいで、どこに車中泊したのか今も解らぬままです)
木々の合間を縫うように走っていくと、森が切れて朝日が眩しい道路に出ました。
車を停め、降りるように促す父。
ダラダラとドアを開けて外に出る私と妹。
8月だと言うのに、早朝の空気は冷たくて一気に目が醒めました。
目の前に広がるのは、石と砂で出来た山。
硫黄の匂いが鼻をくすぐります。
浅間山の麓でした。
他にも観光客が居て、朝日に輝く美しい浅間山を写真に収めているようでした。
私は正直眠いし寒いしお腹空いたし、早いとこどこかで朝ご飯食べたいと切望していた様に覚えているのですが、どこで朝ご飯を食べたのか全く記憶がありません。
そこから先は、
再び木々に囲まれた道をクネクネと走って行ったと思います。
硫黄の匂いが開いた車窓から再び匂う頃、万座温泉に入りました。
私達が泊まった宿は、木造の古びた湯治場の様な民宿で、太い梁と磨き上げられた廊下や階段に歴史を感じさせる建物でした。
確か、そこから少し離れた場所に万座プリンスホテルがあった様な気がします。
泊まった部屋の窓の向こうには森が広がり、涼しくて落ち着く部屋でした。
蝉時雨が遠くの木立からゆっくりと漂う様に聞こえて来て、遠くに来たんだなーとしみじみ思ったものでした。
お風呂に入った時、石鹸が使えない事にビックリしました。
Σ( ̄□ ̄;) 泡立たない!何で?何で?
硬度の高い温泉水に石鹸の成分が反応して泡が出ない事は解っていても、ホントに泡が立たないんだなーと実感。
温泉の良さを堪能出来るほどオトナじゃなかった私は、熱いお湯に辟易。
のぼせた頭で部屋に戻り、あっと言う間に眠ってしまいましたよ。
翌朝。
木立に朝日が射してくるのがとてもキレイで、
窓から風景写真を数枚撮ったのですが、光量不足で思い切り手ブレ。。
宿の食事はどんなだったか、
食堂で食べたのは解るのですが、何を食べたのか全く覚えていません。
(40年も経つと人の記憶とはかくもおぼろげになるのか…)
宿の支払いを済ませ、再びグランドファミリアは走り出します。
途中、湖か沼があったような。
名前は分かりません。
白樺も沢山見たような・・・
写真が殆ど残っていないのが残念。
父がnikonS3で沢山撮っていたと思うんだけど。
帰り道は混んでいました。
上りの車線で度々渋滞につかまりました。
ボンヤリと窓の外を見ていると、地元では見かけないガソリンスタンドを幾つも見かけました。
毛筆で書かれた「出光」の文字。
初めて見ました。
何て読むのかなあ・・・
うんと後になって、
自分でも車を運転する様になってから「いでみつ」と読む事を学びましたよw
ノロノロ運転と炎天下は、容赦なく車中の人々の体力と機嫌を損ねましたが、なんとか無事に懐かしの我が家wに戻って来られました。
その後、私は部活や友達との約束を優先した為、家族5人での旅行は結局それが最後になりました。
上の妹は亡くなり、父母も老いました。
運転していた父にルートや宿の名前を尋ねるも、齢80を越えた父は、
「万座には行ったけど、もう道も宿も覚えてないよ」と言うばかり。
断片的な記憶と共に、
最初で最後の5人の旅行は永遠の思い出になりました。
再びあの日の旅行を思い出したのは、それから30年以上経ってから。
持病の治療で通院していた私は、処方箋薬局で何となく手に取った雑誌に目が釘付けになりました。
それは全国のドライブガイドで、
見覚えのある木立と木々の間をくねくねと伸びる道路の写真に目が釘付け!
ここだ!ここ!
ここ通ったよ!
処方箋薬局でお薬をもらい、その足で書店へ。
同じ本はもう売ってないので、道路地図を買い、父に「ここ通った?」と聞いてみたのですが、
「あー。。。通ったかもしれないけどな」以上。
ああー。道だけでも辿れると思ったのに。
車中泊の場所が解ると思ったのに。
15の夏。
流れ星に見とれながら眠った夜。
渓谷に点滅する赤いランプ。
華やかな旧軽井沢銀座。
寂しいドライブイン。
幼い妹達がかぶっていた白い帽子。
途中の店で買った週刊少年サンデー(笑)
板の間が続く温泉宿。
白樺の原生林。
何もかも、まだそこにあるかのように思えて、
私はもう一度そこに行きたくなりました。
私と違い運転大好きな加とさんに頼んで、
いつか同じルートを通ってみたい。
そして、
車中泊はしなくとも、もう一度あの夜空を流れる星々を見たい。
ささやかな、私の夢です。