かじかのつぶやき

絵を描き 写真を撮り 本を読み 猫と遊ぶ ときどきお仕事な日々。。。

森と暮らすモリ

梅雨どきの雨が上がると、
庭や裏山の木々が一段と色濃く見えて来ます。
花も草も息をするように伸びて行き、
そこに集う虫たちも増えて行きます。

縁側の窓や玄関は、在宅時は開け放しているので猫は外と内を行き来放題、虫も出たり入ったり。

田舎の暮らしでは当たり前の光景で、
それを別段何とも思わないし、
時には蚊が入って来て困るくらい。

夜になると、
時折網戸に大きなキリギリスやウマオイ、アブラゼミやカミキリムシが張り付いてたり。

都会から来る人は「良い所ですねえ」とおっしゃる。

正直、どこが良い所なのかちっとも判らない。
大雨が降れば土砂崩れの危険地域はあるし、
大雪が降れば陸の孤島と化してしまうし、とっても寒い。
コンビニは一番近くても車で15分。
電車は1本乗り遅れたら、次は30分以上待つ事も。

ああ。都会で暮らしたい。
森も山も要らん。あたしゃ花粉症。毎年大変。

・・・そんな風に思っている私です。

でも、今は少しだけ、我が家の周りの濃い緑がいとおしくなって居ます。

それは、ある映画を観たからです。


映画『モリのいる場所』予告編

この映画は、行きつけの美容院店長さんの幼なじみである映画監督・沖田修一さんの作品です。
春未だ浅い時期に髪を切りに行った際、店長さんから沖田監督の新作がもうじき公開だと教えられました。

実在した画家・熊谷守一が後半生の大半を過ごした、豊島区の邸宅での1日を映画化したもので、朝から夜まで、ひっきりなしに色んな人が訪れ、去り、ご飯を食べ、碁を打ち、庭に生きるモノ達を観察し、日が暮れて行きます。

30年間、自宅の庭から一歩も出る事なく、庭に溢れる命のきらめきを見つめ続けた老画家の姿を、沖田監督がユーモアと愛情を込めて描き出しました。

沖田監督と言えば、
南極料理人」が大ヒットしましたっけね。私も大好きな映画です。


南極料理人 (プレビュー)
↑のこの映画でも、食事のシーンがとってもほっこりしてお腹が空いてくるけれど、
モリのいる場所」も食事シーンでお腹好きます♪
七輪で焼いたアジの開き。
歯が無い「モリ」は、お味噌汁の油揚げをハサミで細かく切り、
ウィンナーソーセージは、プライヤー(油絵のキャンバスを張るのに使うペンチの親玉みたいなヤツ)で潰す←汁が飛び散るのを、秀子と美恵は無言で避ける←ここ笑うとこw

お昼のうどんを茹でてる所に、ご近所の奥さんが「カレーが余った」と言って持ってくる←カレーうどんになる←ツルツルして食べにくいので「モリ」には不評w

 

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モリのいる場所」を観る為に、本当に久しぶりに渋谷の街を歩きました。
学生時代から何度か歩いた街だけれど、未だにどこに何があるのか、地図が頭に入って行かない・・・
ハチ公口は何とか行けそうだけど、モアイとかバスターミナルがある所とかどうやって行くのか今も判ってない・・・

でも今は、GoogleMapという強い味方(笑)がいるので、散々検索して映画館「ユーロスペース」までの道順を覚えましたよ!

覚えました、けど・・・・・・


道玄坂
あのダラダラした傾斜の坂道はオバサンの足に堪えた(笑)
運動不足を実感したよ全く・・・歩かないとダメだなアタシ。

そんでもって、

「ユーロスペース」って映画館は、その昔、映画を観る為に買っていた「ぴあ」によく掲載されていた映画館で、ヨーロッパやアジアの芸術性の高い上質な映画を上映する、憧れ(と言うかちょっとハードル高そう)な映画館でした。

モリのいる場所」はそこで上映しています。もちろん他でも上映していますが、その日一番手っ取り早く観られる時間帯で上映中だったのが、ユーロスペースでした。

でもさー、

そんな憧れの映画館がさー、

ラブホに囲まれた場所に建ってるのを見た時は、なんかこう、時代の波、と言うか風向きが変わったのかなって言うのを感じましたわよ。。

それもまた、渋谷という街らしいのかな。

で、初ユーロスペース!ちょっとドキドキしましたよw

上映時間まで少し間があったので、1階にあるカフェで軽く食事。


とってもオサレなCAFE9。
本棚に並べられた書籍や雑貨はちょっとマニアックだけどカフェや映画館の佇まいにマッチしている、というか、それらしい、というか。

コーヒーが美味しかった-。映画のついでじゃなくまた来てみたい。
(映画のチケットを提示すると50円引きになりますよ)

上映時間が迫り、劇場へ。

☆あらすじ☆

画家・熊谷守一【モリ】は妻の秀子と二人暮らし。家事を手伝う姪の美恵と共に朝ご飯を食べ、草木が生い茂る庭を眺めて過ごす日々を30年続けて来た。
熊谷夫妻の元には、近所のオジサンや画商、建設作業員に肉屋、モリに一筆描いてもらいたい温泉宿の営業、熊谷家の真ん前にマンション建設を計画する社長、モリの姿を写真に収める為に通ってくるカメラマンなどが次から次へとやって来たり、文化勲章を授与すると言う役人から電話が来たり、それはもう慌ただしく濃密で愉快な時間が流れて行く。

物語の舞台は、豊島区にあったと言う熊谷家。そこで始まり、終わる。
日がな一日、切り株を行き来するアリを眺め、
洞穴に作った池で泳ぐ魚を見つめ、
アゲハチョウを目で追い、
地面に筵を敷いて仰向けに横たわり、空を見上げる。

木々の葉は生い茂り、草花は根を伸ばして増え、
まるで生き物の様に「呼吸」する庭。

造園関係の仕事をしていると、熊谷家の庭はすぐにも伐採・剪定・草刈り・除草作業が必要な物件だと思えますが、それをやってしまったらモリの世界は崩れてしまいます。

そのままの自然。手つかずの空間。
それこそが、モリの生きる世界です。

何と美しくて贅沢な場所だろうか。
私はそこで暮らして見たいと思いました。
同じ絵を描く人として、スケッチブックと鉛筆を持って、庭の隅に座っていたい。
上映中、何度もそれを思いました。
※モリは昼間は絵を描かず、夜になってアトリエで描いていたようです。

熊谷守一という画家については、名前だけは知っていましたが、どんな絵を描いて来たか、どんな生涯を送ったのかは殆ど知らないままでした。
(と言うか私は古今東西の画家を知らなすぎるのよね(^_^;)絵を描く身でありながら)

自然の中に美しさと不思議さを見いだした生涯は私も見習わねば。
自分が生まれ育った家は、熊谷家同様木々や草花が溢れる場所です。
映画を観た事で、自分の身の回りの自然の豊かさに改めて気づかされました。
庭の木や草花にもっと親しもう。そう、思わせてくれる作品でした。

それにしても、
全身に悪性腫瘍を抱える樹木希林さん、映画の中ではよく働く元気なお婆さん役を演じていらっしゃいます。
撮影は肉体労働でもあるから、どうか無理をせずお身体を大事にして過ごされる事を切に願います。

両手に杖を持ち、よたよたと歩く90歳超のモリを、山崎努さんが熱演。
「キツツキの詩」でもインパクトのある役柄を見事に演じて来られたので、山崎さんの演じる熊谷守一は本当に適役だと思いました。


私がスキだなーと思ったのは、熊谷守一を「モリ」と呼ぶ姪の美恵を演じた池谷のぶえさん。
今期朝ドラでヒロインの幼なじみ・菜生ちゃんのお母さんを演じていますが、イイ感じの天然キャラな美恵が実に光っています(笑)
こういうオバチャンが近所にいたら楽しいだろうなあ♪(ちょっと面倒くさいけどw)


劇中、ドリフのコントが「再現」されて笑えますw
そこで金だらい落とすんか!wwwってシーンが良い!劇場内でも笑いが起こりましたw

三上博史の「謎の男」や冒頭に登場する昭和天皇役の林与一さんも、登場時間は本当に短いのですが、光っていました。

DVDが出たら是非とも買いたいです。
というか、もう一度観に行きたい♪

大変面白かったです!☆☆☆☆☆