水とともに去りぬ・・・
お題「お気に入りの文房具」
さて、お題に沿ってネタを投下してみましょう。
お気に入りの文房具、と言うと、万年筆です。
初めて手にしたのは小学校の低学年くらいの時でしょうか。
母がお嫁入りの時に持って来た道具類の中にあったライトグリーンの万年筆を使って、私はカレンダーの裏に沢山お絵描きをしていました。
ペン先から滲むインクに指を汚しつつも、なめらかに線が描ける事が面白くて、多分ペン先をダメにするまで描き続けたんじゃないかな。
(おかーさん、ごめんなさい)←その後、長い歳月を経てから、母の日にプレゼントしました。
自分の万年筆を買ってもらったのは、中学2年の時でした。
その当時、中学の進学祝いと言うと万年筆が一般的で、入学当時、クラスメイトは自分の名前を刻んである万年筆を持っている子がとても多かったです。
私が当時持っていた万年筆は、学研の中学1年コースの年間購読申込み特典でもらったもので、たしかボディは黄緑色だった様な記憶があります。
3,000円以上する筆記用具を親にねだるのは分不相応な気がしたのと、中1コースの万年筆がそれなりに気に入ったデザインだったのもあって、それで十分でした。
ところが、
景品である事はすぐに同級生たちに解ってしまう訳で、
「景品なんか使ってんの?やだー!買ってもらいなよーwwwwww」と笑われる始末。
今思えば、
そんな事アンタに言われる筋合いはないね!と言い返しちゃうところですが、
私はどっちかと言うとおとなしくて他人に意見など出来るタイプじゃないので、恥ずかしくて急いで筆箱にしまい込むしか出来ませんでしたねえ。
そして13歳の心は小さいキズがついちゃう訳です。なんと弱々しい(笑)
で、中学2年になった頃、意を決して万年筆を買って欲しいと両親に伝えます。
「学校の授業に必要なのか?」
と父に聞かれ、実際のところ鉛筆と消しゴムさえあれば何とかなっちゃう中学校で、万年筆なんてのはハッキリ言えば不必要な文房具ではありましたが、
「硬筆の授業に必要なの!」
と力を込めて宣言し「それなら・・・」と納得した父に地元の百貨店で買ってもらう事に成功!!
それはシャンパンゴールドのつや消しボディに小さく花模様が刻まれ、キャップを外すと中はサーモンピンクと言ういかにも女子向け!な逸品でした。
もう嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて、枕元に置いて寝たくらいですよホント。
サーモンピンクのボディに自分の名前も彫ってもらい、
世界で1つしか無い万年筆だわ!!!と、大満足!!
本当に飛び上がりたいくらいの幸せでした。
どこへ行くにも持っていくほどでした。(書く事なんか無い場所でも)
学校では、セーラー服の胸ポケットに差していました。
当時、大学ノートに漫画を描いていましたが、それも万年筆で描いていました。
(若干使い方を間違えてる)
そして、
別れはある日突然やって来ました。
トイレ掃除の班になったとき、
その日も胸ポケットに万年筆を差したまま、個室の掃除をしていました。
デッキブラシで和式トイレの便器を洗い、汚れを流す為に水洗ペダルを押し下げたのと、胸ポケットから万年筆が便器内に落ちたのがほぼ同時でした。
「カラン!」
「あ!」
「ジャアアアアアア~~~~~~~~~!!」
勢いよく流れ出た水の中で、シャンパンゴールドのボディが一度だけ光って、消えました。
便器に屈んだ姿勢のまま動けず、
私は水流の止まった便器の中をただジッと見つめておりました。
ショックと言うよりも、
天罰なのかなって思いました。
買ってもらった万年筆を持ち歩いて有頂天になっていたから、神様にまた取り上げられてしまったんだなぁと、幼いなりにドライな結論に辿り着き、私は顔をあげてデッキブラシを掃除用具入れにしまい、トイレを出ました。
トイレに落とした事は、自虐ネタにして友達に話し、笑われました。
ばっかじゃん!!何やってんの?と呆れられました。
でも、自分ではもう「天罰」と思っていたので、クラスメイトに笑われてもこれは罰だからと受け入れていました。
さよなら。
私の大切な万年筆。
しばらくの間、私はそこの個室で用を足す事が出来ませんでした。
宝物が姿を消した場所で排泄など出来ませんから。
月日は流れ・・・
高校生になり・・・
ふと、また万年筆が欲しいなと思うようになり、お小遣いから万年筆代を捻出し、父に買ってもらったのより大分安いものを自分で買いました。
これはペン先がすり減るまで長い事愛用していました。
今から25年ほど前、
CBSソニーファミリークラブという通販カタログで目にしたのがこちら↓
万年筆職人・酒井栄助さんの手作り万年筆で、限定5000本制作。
ボディは竹を模した節目模様があり、通し番号も入っています。
お値段は1万数千円。いかにも、
「オトナの万年筆」っぽい(笑)
私は早速注文して、モンブランのブルーブラックインクも手に入れて、毎日の様に文字を書いたものです。
親友への手紙の他に、日記や詩、メモ書きに至る全ての手書き文書をこの万年筆で書き綴りました。
書きやすい中字で、インクタンクも容量があったので、父と母の分も注文し、同じ万年筆が3本も揃いましたよ。
毎日毎日沢山の文字を書きました。
気分はもう小説家(笑)いや、エッセイストかな(笑)中身は薄いんだけどw
インクタンクが劣化してインク漏れが起こるようになるまで使い続け、3本のうち2本は万年筆マニアの友人に贈呈しました。
きっといつか、修復して使えるように直してくれるんじゃないかな。
そうなったら、是非とも日々の書き物に愛用して頂きたいですわい。
そして現在、愛用しているのがこちら↓↓
プラチナの3773シリーズ。細字タイプ。
父にはブラック、母には同じカラーの中字タイプをプレゼントしました。
父と母はブルーブラックのインクを使いますが、私は黒の顔料インクを使います。
ペン先が詰まりにくいのが特長。
この万年筆で手紙を書いていると、時折ふと、あの万年筆の事を思い出します。
あれ以降、筆記用具は筆箱やペンケースに必ず入れておく様になったことは、
言うまでもございませんよ(笑)