けものじゃありませんよ人間ですよ
今年も害獣駆除のシーズンとなりました。
地元猟友会や、遠方からやってくるハンターが近隣の山に入っています。
時々、銃声も聞こえます。
去年だったか、落葉した裏山をぼんやり眺めていたら、蛍光オレンジのベストと帽子を身に着けたハンターさんのご一行が杉木立の間からぞろりと顔を出したので面食らった事があります。
うわ、近い・・・・(・_・;)
もちろん、私は自宅の2階の廊下から眺めていたので、近年特に問題になっている誤射には遭遇しませんでした。
誤射は後を絶ちませんね。
山菜採りだの下草刈りに入った人がイノシシや鹿と間違われてしまう事故。
私も、同じ目に遭った事がありました。
それはもう30数年前の事で、私がまだ小学生の頃の話です。
当時は土曜日も半日登校だったので、私は帰宅後に急いでお昼ご飯を食べ、近所の遊び仲間と山へ「探検」に入りました。
裏山の細い林道を駆け下りていくと、麓には広い場所があり川が流れています。
川に架けられた木の橋を渡った先には、別の山中に続く狭くて急な山道がありました。
息を切らして登って行くと、そこには火伏せの神様(山火事を防ぐと言い伝えられた)を祀った小さな祠があり、そこら辺を「探検」しようと言う事になった子供たちが1列で山へと入って行きました。
予想外な急勾配。杉木立は昼でも薄暗く、道を外れたり転んだりすれば、あっと言う間に川や橋のたもとまで転がり落ちてしまいそうです。
やっとの思いで祠まで辿り着いた時、猟犬の鳴く声が間近で聞こえました。
「ハンターが入ってるんだ。こっちに来るかな」
猟犬の鳴き声が止み、遠くでガサガサと下草をかき分け、小枝がパチパチと折れる音がしたなと思った瞬間、
グォーーーーーン!!!
という音と共に空気を突き破るかの勢いで、小さな「何か」が3メートルほど先にそびえる杉の木の樹皮を抉りながら飛んで行きました。
「うわあ!!!!」
子供たちは思わず叫びました。
樹皮を抉る時の衝撃波みたいなものを感じました。何となく焦げ臭いような、火薬の様な、嫌な匂いも感じました。
その小さい「何か」がライフルの弾である事は小学生でも充分理解出来る訳で、初めてそこで、
「狙われてるのは私らだ!」と言う恐怖に支配されてしまいました。
祠の裏に隠れようかと思う間もなく、2発目が今私達が登ってきた急斜面に弾けました。
弾は石に当たり、砕け散った石の欠片が私の膝小僧と向こうずねに当たりました。
痛い!
わずか5ミリかそこらの石片なのに、猛烈な勢いで四方に飛び散り、そのうちのいくつかがむき出しの足をかすめ、みるみる血が滲んできました。
「わああっっっっ!!!」
さすがにこれには腰が抜けました。
仲間の子供が立ち上がって叫びました。
「にんげんがいるんだぞぉーーーーーーっっっ!!!!」
私も立ち上がり、
「あぶないよーーーーーーっっっ!!!!」
と叫びました。
(てゆうか、猟期に山なんかに入るお前らの方が危ないだろう!!って話ですがww)
すると、
ガサガサという音と共に遠ざかって行く気配がして、それきり山は静かになりました。
犬の声も途絶えました。
さすがにここにずっと居るのはキケンだと思った私達は、急斜面を戻り始めました。
途中まで下りてきて、木立の間から見える広場に見慣れない車が停まっているのが解りました。
あれがハンターの乗ってきた車だな、と思う間もなく、エンジン音が聞こえてきて、車は林道を下り、帰って行きました。
石片が抉った足の傷は、小さいながらも深かったため、完治するのに半月くらいかかりました。
あれ以来、山の中の祠には一度も近づいておりません。
同じ目に遭いたくない、という以前に、急斜面を登って行くのがもう面倒だと解ったし、思ったほど面白い発見も無かったので(笑)
でも、あの出来事から教訓の様な物を得ました。
ハンターから見たら、遠くの人間もイノシシも正確に判別など出来ない。
私達は子供らしい赤や黄色の目立つ色の服を着ていたし、子供特有の甲高い声でお喋りしながら山登りをしていたにもかかわらず、ハンターは銃を向けて来たのです。
誤射事故が起こり、ハンターが逮捕されるたびに思い出すのはこの時の事。
シカやイノシシと見間違える事はこれからも無くならないと思います。
でも、猟犬は気づいていたのでしょうかね。
匂いや声で、獲物ではないと判断したのでしょう。途中で鳴かなくなりましたから。
私は動物大好きなので、狩猟シーズンになると辛いものがあります。
とは言え、増えすぎてしまったシカやイノシシ、サルが及ぼす人的影響の深刻さを考えると、銃で撃つなんて残酷!とか言ってる場合じゃありませんし。
難しいですね。野生動物との共生バランスが取れる未来が来るのでしょうか。
キノコやら山菜採りで山に入る方々、お気をつけあそばせ。
その動き、思った以上にイノシシっぽいかもしれませんよ。