かじかのつぶやき

絵を描き 写真を撮り 本を読み 猫と遊ぶ ときどきお仕事な日々。。。

もう会えないかもしれないけれど。

お茶の水のデザイン学校に通っていた頃、沖縄から上京してきたYちゃんと言う子がいました。

沖縄、というと果てしなく遠くにある暑い島というイメージしか持っていなかったので、彼女から聞いたふるさとの話はとても興味深かったです。

食用イルカの話には仰天しました。
「わんぱくフリッパー」を見て育った世代ですから、 食べるだなんて19の私には考えられない事でもあり、一方で、どんな味なんだろうか興味も深かったです。

彼女はコートを持っていませんでした。
沖縄ではコートだなんて必要がないからです。
なので、彼女はお母さんが若かりし頃に着ていたと言う黒いマントの様な可愛らしいコートを着ていました。
1年生の冬のある朝、東京に初雪が降りました。

初めて雪を見たYちゃんは、寒いのも忘れて大喜びでした。
旅館をリフォームして作られた、学校の寮の玄関先には、旅館当時から植えてあったと思われるヤツデが枝葉を伸ばしていましたが、そのつやつやした葉に雪が舞い降りるのを今も覚えています。

彼女はとても嬉しそうでした。

Yちゃんとは、84年の3月に新宿で卒業祝の宴席で会ったのが最後でした。
30年近い月日が流れ、彼女が今、どこでどうしているかは全く解りません。

先週、東京に大雪が降り、テレビでは渋谷や新宿の積雪状況を中継していました。
その時に、ふいにYちゃんの事を思い出しました。

雪を見て、あんなに嬉しそうにしている同い年の子なんて初めてだったから。
そんなに雪って珍しいんだ・・・沖縄って本当に雪とは無縁なんだな。
驚くと同時に、冬と雪が嫌いな私は、沖縄に住んでみたいなと思ったものでした。

遠い昔に、時間を共有した仲間の事は、時折ふいに思い出します。
今頃、どうしてるかな、って。
そんな時に読んだ本がコチラ↓

横道世之介 (文春文庫)

横道世之介 (文春文庫)

横道世之介。
彼は長崎から東京の大学に進学し、気弱ながらもまっすぐに生きて、周囲の友人達の心に小さな記憶として刻まれる。
勢いで入部してしまったサンバサークル。
たまたま講義の席が前後だった事から、縁が生まれた同級生。
そこからまた、新たな出会い。好きになった女性。
故郷の両親や友達との絆。

そうしたものを紡ぎながら、世之介は人々の心に小さな灯りとなって残る。

そして20年後。世之介の名前が、あるニュースで報じられる・・・


この作品は映画化され、前の日記で紹介した「南極料理人」「キツツキと雨」を監督した沖田さんの次回作でもあります。
公式サイトはコチラ☆ 

行きつけの美容師さんに教えてもらった情報から、この本を読む事になりましたw

前作2本に出演している高良さんが主演です。
相手役は吉高さん。どんな映像作品になるのでしょうか。期待がふくらみます。

誰の記憶にもある、もう会えないかもしれない友人たち。
絆は切れてしまったけれど、心の片隅でちゃんと生きてる。
もう一度ぜひ会いたい!・・・とまで強く思う事はないのだけれど・・・
元気ならば、それでいい。 

あの時は楽しかったね。

それほど多くはないけれど、友人達に愛された横道世之介も、そういう風にずっとずっと記憶の片隅で生き続けるのでしょうね。

Yちゃんにもらった沖縄みやげ、今も大切に飾っています。
額縁に入った、シーサーの染め絵。

彼女のお土産はそれだけじゃなく、ランチョンミートもありました。
スーパーでよく見かける「SPAM」の缶詰は誰もがご存じだと思います。
Yちゃんがくれた缶詰はSPAMではなく、見た事もない銘柄で味も全く違うものでした。
SPAMって、食べた事がある方ならおわかりでしょうが、結構塩気が効いてますよね。

Yちゃんのくれたランチョンミートは、甘みがあってさっぱりしていてフワフワと柔らかく、それはそれは美味しかったのです。
私は同じものが食べたくて都内のあらゆる百貨店を回りましたが、とうとう見つかりませんでした。
あれはきっと沖縄でしか買えないんでしょうね。
白地に、中身の写真と英語の文字がズラズラ書かれた缶でした。


今思い出したけれど、彼女はオレンジ色のコンバースを履いていました。
沖縄に帰省したときに買ったとかで、お値段を聞いてびっくり。都内で売られているコンバースの半額以下。
普段からそんな値段だと言う話でした。

Yちゃんに会えたら、真っ先にあのランチョンミートの事を聞きたいです(笑)

もう会えないでしょうけどね。